活動

2021年2月19日

「若手研究者データ解析・共有基盤創出チャレンジ」研究成果報告

ショウジョウバエ中枢ニューロンからのPatch-seq解析手法の技術習得

公募研究A02山元班
佐藤 耕世
情報通信研究機構・未来ICT研究所・研究員

私は自然科学研究機構・生命創成探求センターの郷康広先生のご支援の下、Patch-seq解析を実施しました。ショウジョウバエの雌が雄と交尾するかどうかという性質、すなわち性的受容性は個体ごとに異なっており、餌や気温などの飼育条件に強く影響されることが分かっています。私どもは、雌の性的受容性を制御するインスリン産生ニューロン、すなわちIPCに着目して、このニューロンの電気的な応答が飼育条件に依存して変化することを見出しており、その環境依存的な変化の背後にあるイオンチャネルなどの遺伝子の発現変化をPatch-seqによって明らかにしたいと考えました。これによって、雌がもつ高度で複雑な意志決定のしくみの解明を目指しています。あらかじめ、飼育条件が異なる雌のIPCからパッチクランプ記録をとった後、用いたガラス電極中に細胞体を回収し、郷研究室でシングルセル・トランスクリプトーム解析のライブラリーを作製していただきました。準備したサンプルのすべてについて、定量的なシーケンス・データを得るために十分なcDNA量を合成できることが分かり、こうして飼育条件に依存して発現量が変化する差次的発現遺伝子を特定するところまで実験を進めることが出来たことが、私にとって一番嬉しい結果でした。郷先生には、Patch-seq解析を実施するために必要な実験試薬やプロトコールを惜しみなく教えていただき、また、本領域から配分された予算ですべての試薬を揃えることが出来ました。大変感謝しています。もし叶うならば今後も郷研究室との連携を維持しながら、習得したPatch-seq解析技術を用いて、IPC以外の中枢ニューロンにも解析の対象を広げてゆきたいと考えています。